スポーツトレーナー

アスレチック・トレーナーとは?

アスレチック・トレーナーとは?

はじめに

財団法人 日本体育協会公認アスレティックトレーナーの説明として、「スポーツドクター及びコーチとの緊密な協力のもとに、スポーツ選手の健康管理、障害予防、スポーツ外傷・障害の応急処置、リハビリテーション及び体力トレーニング、コンディショニング等にあたる者」とあります。

私も、プロ野球のトレーナーとして5年以上のキャリアがあったので、特例を受け、短期講習の上、受験しました。一応、資格は取ったのですが、今の仕事の中では、現場に立っていませんので、あまり意味を持たないようです。
アスレチック・トレーナーという見出しですが、私の考えるトレーナー像とは、大きくかけ離れたもののように感じます。資格として、日本体育協会が認定するという動き自体には賛同したいと思います。しかし、現実としては、 トレーナーの役割、技術は多岐にわたり、アスレチックトレーナーの定義にはめ込むのは難しいのではないかと思うのですが。

以降、いわゆるトレーナーとは何かを考えていきたい。

 

トレーナーとは何か?

これが、正直いって一番難しい質問だと思います。
なぜなら、いわゆるトレーナーというものの定義がまだ、日本では完全に確定されていませんし、認知度が非常に低い。 言葉は知っていても、何をする人という質問が多い。(プロ野球では、打者がデッドボールを受けた時、ベンチから飛び出してシューをする人と説明する) 球団や企業の上の人達でも、ちゃんと理解している人は少ないと思います。 トレーナーの歴史自体は、戦後すぐのプロ野球でトレーナーとして採用されている人達がいますので、結構、長い?歴史があるはずなのです。基本的には、上記で紹介した日本体育協会公認アスレティックトレーナーの定義でよいと思いますが、 言葉では表せないものが多くあります。

最近、トレーナーになりたいという人が、多くなってきていると聞きます。いろいろな思いがあるのでしょうけど、 現実は、かなり厳しいです。トレーナーを公募するような大きな企業は無く、この世界は身内の世界と言えるでしょう。 派閥(治療技術の流派みたいなもの)もありますし、お互いに牽制している部分があります。この世界で生きていくには、 自分のトレーナーとしての技術を高めることだと思います。この先、知識(科学的なものを含め)だけでは生き残れない時代になるでしょう。本物を求める時代へとなりつつあるのだから。

 

トレーナーとして、どうあるべきか

トレーナーとしてどうあるべきでしょうか。
プロ野球のトレーナーに特化している部分がありますが、ご了承ください。

まず、トレーナーになったということは、一部を省き、鍼灸、マッサージ師、柔道整復師等の免許があるものと思います。 そこで、治療というものは、東洋医学を主体としたものであるべきだと考えます。それは、鍼、マッサージ、整体、漢方 などをおりまぜ、体を総合的(全体的)な見地から治療を進めていくというもので、 必要に応じて、理学療法、各種トレーニングなどの西欧医学的治療を加味してよいと思います。しかし、西欧医学の考え方として、局所(障害個所)だけの治療に執着してはならないものです。部分、部分だけにとらわれては全体が見えず、真の原因となっているものを見逃してしまう可能性があるので注意してほしい。

トレーナーになって第一に研究すべきことは、「スポーツの原点」を見極めることにあります。 スポーツの原点とは、動作を起こす前の、体の静止状態がいかに正しい状態にあるかということであり、この「正しい体」の状態を把握することが最優先であると思います。「正しい体」 とは、スポーツをする上で、基本的に健康体であり、どこにも歪みがなく、 バランスの取れた状態にあるものです。この状態を把握できないと、歪みが出た時に、指摘できないし、治療もできない。 ここにトレーナーとしての役割の最重要ポイントがあると思います。

次に、正しい体の使い方を理解しなければならない。正しい体の使い方を教えることにより、 秘めたる力を発揮することが出来、障害の予防となり、また、障害の早期回復にもつながるからです。フォームという言葉は コーチの分野であり、使えません。しかし、トレーナーは、選手に体の使い方を教えるべきなのです。障害の予防が、大前提にあるので、歪みのある選手には、声をかけるべきと思います。

選手もプロである。我々もトレーナーとしてのプロ意識を持たなければならないだろう。ただし、選手が主であることを忘れてはならない。我々はあくまでも裏方であり、選手を見下したり、威圧してはならないのです。それに、我々は選手の生活権を守ってやらなければならない。つまり、障害の出た選手に「これはダメだ」とか、「休め」とか消極的なことをペラペラ言うのは良くないと思います。こういうことを言うトレーナーが多いのも事実ですが。

我々は、プロとして正確な判断をしなければならない。
医学的診断はドクターの分野なので、トレーナーは法律上できません。しかし、外傷や障害の程度に関しては判断できる でしょうし、出来るのか、出来ないのか、どのくらいで治せるのかを即座に判断することが必要となることがあります。 曖昧な答えを、監督やコーチにしていては、トレーナーの地位など上がるはずもありません。
正しい判断をする為には、選手との隔たりを保たなければならないし、個人的に選手と飲みに行くなどの行為は、自粛するべきだと思います。いや、絶対にやってはいけないものです。
信頼感とは、正確な判断をすることであり、曖昧な判断で休ますことでは信頼感は得られない。

どんなに科学的な治療や、医療機器が発達しようが、トレーナーの最大の武器は「素手」である。 素手に勝る医療機器はありません。両手さえあれば、どこであろうと治療をすることが出来ます。私は手を使う技術を高めることが、 トレーナーとして生きていく上で、一生の課題であると思っています。医学的知識や科学的知識は確かに必要である。しかし、知識だけを追い求めるのは考えものであると思います。トレーナーの世界は、学問ではなく、技術の世界だと思います。選手、若しくは、 患者さんにとっては、治るのかどうかが問題であって、医学用語を羅列しているだけでは意味がないのではありませんか。

トレーナーの治療時の姿勢も大事である。体の姿勢に加え、心の姿勢も大切である。ベッドの上に あぐらをかき、マッサージしているトレーナーもいますが、情けなく思います。気の入れ方次第で、結果がまったく違うものになってくるのですから。

トレーナーの地位を向上させるためには、アピールすることも必要であるが、自分たち個々の技量を高め、謙虚な気持ちで選手に接し、トレーナーとしての本分を確立することであると思います。選手からの真の信頼感があって初めて、トレーナーと言えるのではないだろうか。

最後に、人としての人格を形成すべし。トレーナーである前に、ひとりの人間としての礼儀を尽くし、 治療する相手に対しても誠意を尽くせ。

 

理想のトレーナー

私の理想としているトレーナーとは、 治せるトレーナーです。

治せるというのはもちろん、故障を起こしたら、速やかに治すこと、そして、故障の予兆を察知したら、それを正すことです。 これは、思ったほど簡単なことではありません。現実には、治せるトレーナーが少ないことです。 いや、もしかしたら、いないかもしれない。私でもまだ、まだ何年もかかるでしょう。

余談になりますが、故障者が多くなり、質より量で、トレーナーの数を増やしたところで、故障者の数が減るかというと、 そうでもないのです。かえって、故障者は増える傾向にあるように思います。それは、トレーナーの間で分担制ができて、(いいように思われますが)自分の分担以外は観ないということが起こります。トレーナーには、ベテランもいるし、 新人もいます。新人の報告とベテランの報告を同等に扱うことになるので、そこに、故障の故の字にもならない選手を、 故障者扱いとしてしまうことになってしまうのです。また、ひとりの選手に対して、数名のトレーナーが診るような状況になると、トレーナー個々の技術、技量(治療方針、治療の組み立て方、治療の力加減、手技などの要素)が違うために、 他のトレーナーがその選手を触ると、自分の考えている治る過程というものが、ずれてくることが起こります。結局、 治りが遅くなってしまいます。

さらに、そこに、ドクターが絡むと、もっと治りが遅くなってしまします。(ドクターに怒られそうですが)要するに、 トレーナーにとって仕事のしやすい状況は、トレーナーの数が少ないこと、ドクターがなるべく絡まないこと、全体的に チームを観れること、自分の技術を最大限に発揮できること。

 

トレーナーの醍醐味

トレーナーをやってきての醍醐味は何かと言えば、自分が調整した選手が、活躍した時(当たり前のこと)、それを選手が認識している時です。意味していることが分かるでしょうか。調整した選手が活躍するのは、裏方のトレーナーにとっては当たり前のことであり、そうならなければならないのです。しかし、ここに、 選手がそのことをどう思っているのかが問題なのです。感謝しているとか、○○さんのお陰とか、口ではうまくいう選手もいます。本当に、分かっている選手は、何も言いません。ちゃんと調子の悪い時には、ご指名で「お願いします」と来るものなのです。そこに、信頼感というものがあるのです。また、監督やコーチもちゃんと認めている時は、選手に「○○先生に診てもらいなさい」とか、それなりの対応をしてくれます。
それだけに、自分の技術の向上に努力し、選手に誠意を尽くすことだと感じています。

これもまた、余談ですが、裏方で目立たないトレーナーの存在が、チームの勝敗のかなりの部分で関与していることを知ってもらいたい。反論があるかもしれませんが。トレーナーは裏でマッサージをしていればいいというような存在ではないのです。 大きく見れば、年間のゲームの流れ、そして、各ゲームの流れを判断して、(監督の考えに沿って)裏で選手を調整していくのです。一軍と二軍の入れ替えのタイミングを考え、つねに状態のいい選手を作っておくのです。これも、トレーナーの役割だと思います。各選手の調整法を研究するのも、結構、楽しいものです。

 

以上

この記事は、まだ巨人軍のトレーナーだった頃に出したものです。10数年前になりますので、トレーナーの考えや地位などが少しは上がっているとは思います。あまり当時のトレーナー陣とは接触していませんので、内部の状況は分かりません。みんなの技術が向上していることを願っております。

 

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プロフィール


矢作 晋
昭和35年9月
大阪市阿倍野区生まれ

1986年から21年間プロ野球のトレーナーとして、選手をサポートする。2007年より日本橋に矢作治療院を開業し現在に至る。

詳しいプロフィールは>>
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